事例から、意思決定を考える

厚生労働省の2003年の地域保健従事者向け報告書は、ケースメソッドについて、特定の条件での意思決定を考え、事前に事例を読み、自分の考えを持って討議へ参加する手法を説明しています。講師が意見を引き出し、論点を整理する役割も示しています。

この方法を参考に職場で実施するなら、検討する場面と、参加者に渡す情報を先に決めます。ここで使うのは編集部の架空例であり、医療や安全に関わる判断を練習する事例ではありません。

情報のない部分を、勝手に埋めない

例えば、社内説明会で配る資料の準備が遅れており、予定どおり開催するかを検討する事例を作ります。開催日、参加者へ知らせた内容、未完成の資料が何かなど、判断の前提を明示します。どの対応を選んでほしいかに合わせて、後から条件を足さないようにします。

参加者には、選ぶ案、その根拠、まだ知りたい情報を分けて書いてもらいます。「担当者が急げばよい」と言う前に、何が未完成で、誰が何を確認する必要があるかを考えます。書かれていない事情は、推測として区別して話します。

討議では、案の名前だけを並べず、異なる結論になった前提を確かめます。一人は配布資料が必須と考え、別の人は後日配布でもよいと考えたのかもしれません。その違いを確かめる問いが、次に必要な情報になります。

終わりに、判断の変化を残す

進行役は、発言の多さで結論を決めず、出てきた根拠と不足情報を整理します。会社に実際の規程や決裁条件がある場合は、それに反する案を実行してよいという意味にはしません。研修上の検討と、実務で必要な承認は分けます。

最後に、最初の案から考えが変わった点と、その理由を短く残してもらいます。全員が同じ答えになったかより、何を確かめれば判断できるかを説明できる状態を目指します。

実例を教材に使う場合は、情報を共有できる範囲と匿名化の必要性を確認します。特定の社員を批判する材料として再現せず、研修で考えたい条件に集中できる題材を選びます。